身体の声を聞き、心を感じる柔道整復師の中村和仁です。西洋医学の知識をベースに、東洋医学の良い所を付け加えたものをお届けいたします。
当院へ来院されている方からもよく聞く質問に、「ステップ・アップについて」というものがあります。
でも、これって、本当に妊娠の近道なのでしょうか?
不妊治療について
クリニックでの不妊治療は、
一般不妊治療(タイミング療法、人工授精)と高度不妊治療(体外受精・顕微授精)に分けられています。それぞれ治療法も料金もそして身体への負担も大きく異なってきます。
一般不妊治療では、精子と卵子が、自らの能力に応じて、母体内で受精するため、赤ちゃんからすると自然妊娠と何ら変わりません。 一方、体外受精は、体外の培養液内で受精が行なわれるため、完全に人工的な妊娠となります。
一般不妊治療とは
タイミング療法
まず、不妊の相談で病院に行くと、タイミング療法が始まります。タイミング法とは、妊娠しやすい最適な性交渉を持つ時期を、医師が指導する事で妊娠を目指す方法です。
これは、貴女が不妊だから、と診断されたから始まった訳ではなく、月経周期をちゃんと診ないと判断できないからやっている、と思ってください。その段階に応じて、ホルモンの値がどうだ、とか診られている訳です。
よって、ご自分で基礎体温を記録したり排卵検査薬を用いたりして、自己流で妊娠しやすい時期を判断する方法とは異なります。受精能(精子と受精できる能力)の高い成熟卵子を準備したのち、排卵時期を設定したり正確に予想したりすることで、最も妊娠しやすい日時を指導する医学的な不妊治療の1つと言われております。
人工授精
ご主人の精子を確認して、「運動率が悪い」とか「量が少ない」などの場合には、人工授精を勧められます。
膣の中は雑菌の侵入を防ぐために酸性に保たれているのですが、性交時の際に、男性器から射精前にカウパー腺液という粘液、女性器から頚管粘液が排出され、その粘液が出会う事で、中性の道が出来、その道をアルカリ性である精子が上っていきます。たくさんの精子が死に、その上を別の精子が昇っていき、かなりの数を減らしながら、中性である子宮内に入っていきます。
人工授精では、クリーニングされて、受精能のついた精子を、排卵が起こるであろうと思われる日に合わせて、直接、子宮内に送り込むので、多少、数が少なくても、元気がなくても、無事に、妊娠する場所である卵管膨大部にたどり着く事が出来ます。タイミング療法との違いは精液が入る所だけで、自然妊娠に近い方法です。卵管内で自然の受精が起こらなければ妊娠する事は出来ません。よって、赤ちゃんへの影響もなく、副作用もほとんどありません。
高度不妊治療とは
体外受精
採卵手術により排卵直前に体内から取り出した卵子を体外で精子と受精させる治療です。受精が正常に起こり細胞分裂を順調に繰り返して発育した良好胚を体内に移植すると妊娠率がより高くなることから、2~5日間の体外培養後胚を選んで腟から子宮内に胚移植する事が多いです。
受精した卵しか戻さないため、一般不妊治療よりも、かなり妊娠率が高くなります。
ちなみに、日本産科婦人科学会によると、体外受精では、妊娠率は、30代前半までの方だと40%近いのですが、40代になると20%を下回り、年々、妊娠が難しくなっていきます。とはいえ、タイミング法での妊娠率は数%~約5%、人工授精での妊娠率は、数%~10%と言われているので、凄い妊娠率であると思われます。
採卵手術に先立ってしばしば調節卵巣刺激という方法で数個~10個前後の成熟卵を採取するために排卵誘発剤を1週間前後使用します。排卵誘発剤を使わない、自然周期法の場合には、妊娠出来る卵は1個しか作られません。
採卵手術は、経腟エコーで観察しながら腟から卵胞に針を刺し、卵胞液とともに卵子を吸引して行います。数や場所によって、麻酔を使う場合と無麻酔で行う場合があります。採卵手術後には、着床に適した子宮内膜を作る目的で、黄体補充などのホルモン治療を行います。良好な子宮内膜が期待できなければ、全胚凍結を選択して、今回の周期を見送り、次周期以降、胚移植を行います。
また、卵巣の反応は個人差が大きく、排卵誘発剤を使うと、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という副作用が生じる事もあります。卵巣がふくれ上がって、お腹や胸に水がたまるなどの症状が起こる事があります。重症の場合では、腎不全や血栓症などの、いろいろな合併症を引き起こす事があります。
顕微授精
顕微授精とは、顕微鏡で拡大視しながら、受精の手助けを行う方法で、以前はいろいろな方法がありましたが、現在では、主に、ひとつの精子を直接卵子に注入して受精させる、ICSI(卵細胞質内精子注入法)—英語の頭文字をとって(イクシイ)と呼ばれます—が行われています。
ICSIでは、形態が正常で運動率が良好な精子をひとつ選別して、細いガラス針の中に取り込み、これを卵子に注入します。つまり、受精の最初の段階である卵子への精子の取り込みを人工的に行う手段です。
ステップアップはいつ頃やった方が良いのでしょうか???
クリニックでの不妊治療は、これらの方法で施されます。
これらのステップをどのように進めていくのか、また、その必要があるのか、についての、私見を述べたいと思います。
結論としては、一人ひとり、条件が違います。ステップアップしても、早く授かるかどうかは、誰にもわかりません。
なのに、
「赤ちゃんが出来ないから。」といって、病院へ行くと、まずはタイミング法が始まります。
上でも書きましたが、検査のために必要なのでやっているので、必ずしも、不妊だから、というわけではありません。そこで、色々な検査もされると思いますが、その際に、色々な原因が見つかる事もあります。精子の運動率が悪い、子宮筋腫がある、甲状腺に異常がある、等、ですね。その場合には、甲状腺疾患のように、その治療をしなければ、妊娠に至らない場合も多々ありますし、精子の運動率のように、「今日はたまたま悪かった。明日はいいかもしれない。」というものもあります。
はっきり言って、病院のドクターは忙しいです。流れ作業でこなしていかなければ、全員診ることが出来ません。なので、血液検査などでの生理学データで、一律に治療が施されていきます。
「良い卵を作ろう」とクロミッドなどの排卵誘発剤を使い、薬の副作用で子宮内膜が薄くなり、逆に妊娠しにくい身体になってしまう場合も、多々あります。
その場合には、薬に負けないようにさせる方法もありますが。
お母さん方の身体はひとりずつ違います。例え、体外受精をしたからといって、妊娠できるわけではありません。6割以上の方は出来ませんから。なので、大きなお金を使うので、確実な事をして下さい。
ぐずぐずしている暇がない!と言われる方もいらっしゃるでしょうが、妊娠できる身体を作ってから、このような治療を受けられた方が、長い目で見ると、早いのではないかな、と思われます。