「基礎体温の高温期が短いんです……」「黄体ホルモンが足りないって言われました……」
私の整骨院に初めて来られる妊活中の女性たちから、こんなお悩みをよく耳にします。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵後にふかふかになっている子宮内膜を維持して、受精卵が着床しやすい環境を作ってくれる大切なホルモンです。
「自分で増やす方法はありませんか?」というご質問も多く寄せられます。ですが、答えは少し厳しく、「簡単には増やせません」。ただし、「原因に目を向け、必要な対処をすれば改善の可能性は十分にある」のです。
この記事では、黄体ホルモンが不足する原因や本当に効果のある対処法について、妊活アドバイザーである私・中村和仁が、心を込めて解説いたします。
- 黄体ホルモンは自力で確実に増やすことが難しい理由
- ホルモン補充療法以外の現実的な選択肢
- 自然妊娠を目指すための血流改善というアプローチ
1. 黄体ホルモンの役割と妊娠への影響
妊娠を望む女性にとって、黄体ホルモン(プロゲステロン)は欠かすことのできない存在です。排卵時に、卵巣から卵子と一緒に分泌されるこのホルモンは、子宮内膜を厚くふかふかになっているのを保ち、受精卵がしっかり着床できるようサポートするためのものです。
さらに、着床後も黄体ホルモンが十分に分泌され続けることで、子宮の筋肉の収縮を抑え、妊娠を維持する働きも持っています。つまり、妊娠の“維持”を一手に担う、大変重要な存在なのです。
しかし、この黄体ホルモンが不足していると、どうなるのでしょうか?
まず、「高温期」が短くなると思われます。普通、プロゲステロンは14日±2日存在しているのですが、充分な量がないと早く消失して子宮内膜が崩れ落ちることもありえます。ということは、黄体ホルモンが足りないと、子宮内膜が不十分なまま月経が始まり、受精卵が着床しても育たない……そんな状態になってしまうのです。
「排卵はしているはずなのに、なかなか妊娠しない」――そんなときは、この“黄体機能不全”が隠れている可能性があります。
2. 黄体ホルモンが不足する主な原因
黄体ホルモンが不足する原因は、実ははっきりとは解明されていません。排卵が起きているのに、なぜ黄体ホルモンが十分に出ないのか――それは、単一の原因で説明できるものではなく、いくつもの因子が複雑に絡み合っているとされています。
● 視床下部-下垂体-卵巣系の内分泌異常
ホルモン分泌の司令塔である視床下部、下垂体、そして卵巣のネットワークがわずかに乱れるだけでも、排卵後の黄体形成が不完全となり、結果としてホルモンの分泌不全を引き起こすことがあります。
● 子宮内膜の発育異常
黄体ホルモンが十分にあっても、それを受け取る「受け皿」である子宮内膜が適切に反応しなければ、結果的に黄体機能不全と似たような現象が生じることがあります。ホルモンの量だけでなく、その「効き方」も重要なのです。
● 医学的にも未解明の部分が多い
黄体ホルモンの分泌不全は、内分泌学の中でも未解明の領域が多く、現段階では「こうすれば必ず改善する」という明確な方法は確立されていません。検査や治療方針も医師の経験に委ねられることが多いのが現状です。
だからこそ、「なんとなくストレスかな」などと自己判断せず、きちんとホルモン検査や超音波検査などで体の状態を見極めることがとても大切です。
3. 自分で黄体ホルモンを増やすことはできる?
「黄体ホルモンが足りないなら、自分で増やす方法はありませんか?」
妊活中の女性からよくいただく質問のひとつです。
結論から申し上げますと、黄体ホルモンを“自力で確実に増やす”方法は、現在の医学では存在しません。
黄体ホルモンは、排卵後に卵巣内で形成される「黄体」から分泌されるホルモンです。つまり、ホルモンを十分に出すには、「質の高い排卵」が不可欠です。ところが、この排卵や黄体の形成は、視床下部-下垂体-卵巣系という極めて繊細なホルモンのネットワークによって制御されており、そこを“自分の努力だけ”で操作するのは非常に難しいのが実際です。
世の中には、「ビタミンEが良い」「大豆イソフラボンでホルモンバランスが整う」などという情報が溢れています。確かに、それらの栄養素は体内環境を整えるうえでは一定の価値があるかもしれません。しかし、それはあくまで「間接的なサポート」であって、黄体ホルモンを直接“増やす”作用はありません。
言い換えれば、「栄養療法や自然療法だけでどうにかなる」と信じてしまうと、かえって貴重な時間を無駄にしてしまう恐れもあるのです。
一方で、「医師の言うことがすべて正しい」と盲信するのも危険です。実は、「黄体機能不全」という診断は、明確な基準があるわけではなく、非常に曖昧なものです。医師によっては、基礎体温だけで診断してしまうこともあり、検査のタイミングや方法によって結果が大きく変わってしまうこともあります。
ですから、「足りないから黄体ホルモン剤を出しましょう」といった一方向的な処方に対しても、妄信せずに一歩引いて、冷静に自分の体と向き合う視点が大切なのです。
4. 本当に必要な対処法とは?
黄体ホルモンが不足しているかもしれない――そう感じたとき、まず大切なのは「正確な現状把握」です。そしてそのうえで、必要に応じた適切な対処をしていくことです。
● 基礎体温の記録を継続する
基礎体温は、排卵の有無や黄体ホルモンの働きを間接的に知る手がかりになります。高温期が短かったり、グラフが不安定だったりする場合には、黄体機能不全の可能性を疑う材料になります。ただし、体温の変動には個人差もあり、1枚のグラフだけで判断せず、最低でも3ヶ月以上の記録が必要です。
● 血液検査や超音波検査で確認する
ホルモン分泌の状態を知るには、やはり血中のプロゲステロン濃度の測定が有効です。ただし、血液検査にも「黄体期の適切なタイミングで採血する」という条件があり、タイミングを外せば“正常”と出てしまうこともあります。
また、超音波によって子宮内膜の厚さや排卵の様子を確認するのも、重要な判断材料になります。
● 必要に応じてホルモン補充療法
医学的に黄体ホルモン不足が疑われる場合は、ホルモン補充療法が選択されることがあります。
黄体ホルモン製剤(プロゲステロン製剤)は内服・注射・膣座薬などの形で処方され、着床のサポートや妊娠の維持に使われます。
これは「自然なホルモン分泌を促す」のではなく、「外から補う」方法ですので、個人差が大きい体内の状態をコントロールするうえで、医学的には現実的なアプローチといえます。
ただし、補充療法も万能ではありません。黄体ホルモンを補っても、根本的な排卵の質や子宮環境の問題が解決されなければ、結果につながらないケースもあるのです。
だからこそ、補充療法を使うかどうかは、婦人科医との十分な対話の中で判断していくことが重要です。
とはいえ、ホルモン補充療法だけが選択肢というわけではありません。
ホルモン療法は確かに医学的な根拠に基づいた治療ですが、それが「唯一の正解」とは限らないのです。
特に、薬による治療に不安や抵抗を感じる方も少なくありません。
実は、当院でも妊活中の方に対して、からだの血流を整える施術を行っています。骨盤内の血流を促進し、卵巣や子宮の周辺環境を整えることで、視床下部から分泌されたホルモンが卵巣にしっかり届きやすくなる――そういう流れができると考えられています。
実際に、クリニックで「黄体機能不全」と診断された方々が、当院の施術に継続的に通われ、特にホルモン剤を使うことなく自然妊娠に至った例も多数あります。
これは「黄体ホルモンを自力で増やす」というよりも、「からだが本来持っている力を引き出してあげる」ことで、ホルモンが自然と巡るようになるという考え方です。
5. それでも自然な妊娠を目指したい方へ
ホルモン補充療法に頼らず、できることなら自然な形で妊娠したい――そう願う女性は少なくありません。
実際、私の整骨院にも、「できるだけ薬に頼りたくない」「体に負担をかけたくない」とおっしゃる方々が多くいらっしゃいます。
そのような方にこそ、私たちは“からだの土台を整える”というアプローチを大切にしています。
● 卵巣や子宮への血流改善が鍵
黄体ホルモンの分泌は、視床下部-下垂体-卵巣のホルモン指令系の働きに依存していますが、その指令が正しく届くためには、卵巣がきちんと栄養や酸素を受け取れる状態であることが重要です。
つまり、「卵巣への血流」がしっかりしていることが前提になります。
当院で行っている骨盤矯正や自律神経の調整、内臓調整などは、まさにその血流の巡りを整えることを目的としています。
● 身体と心の緊張をゆるめる
日々の忙しさや不安、焦り……妊活中の女性の心には、大きなストレスがかかっています。
体の緊張と心の緊張は密接に結びついており、筋肉がこわばれば血流も滞り、ホルモンの伝達にも影響が出てしまいます。
私たちは、施術を通して“からだをゆるめる”ことで、心もふっと軽くなるような空間を目指しています。
そのリラックスがホルモンバランスの改善につながることも、少なくないのです。
● 自然妊娠された方々の声
「ずっと薬に頼っていたけれど、施術を受けるようになってから体温が安定しました」
「黄体機能不全って言われてたのに、気づいたら自然妊娠していました」
――そんな声が、私たちにとって何よりの励みです。
もちろん、すべての人に同じ効果があるとは言いません。でも、あなたの体が本来持っている力を信じてあげること。
その「信じる力」こそが、妊活の第一歩なのだと思います。
6. まとめ:一人で抱えず、正しい知識とサポートを
黄体ホルモンは、妊娠の成立と維持に欠かせない大切なホルモンです。
ですが、「自分で増やす」ことは簡単ではなく、医学的にもそのメカニズムは複雑で、まだ完全には解明されていません。だからこそ、「足りないなら補えばいい」「栄養を摂れば改善する」という単純な話ではないのです。
一方で、「ホルモン療法しか方法がない」と諦める必要もありません。
体の血流や自律神経のバランスを整えることでも、ホルモンが届きやすい体づくりを目指すことができます。
どんなアプローチであっても、大切なのは「あなたの体にとって無理のない方法を選ぶこと」。
そして、つらいときは一人で抱え込まず、信頼できる専門家に相談することです。
あなたの妊活が、やがて“新しいいのち”との出会いにつながりますように。
私たちも、心から応援しています。
- 黄体ホルモンは自力で簡単に増やせない
- ホルモン補充療法だけが正解ではない
- 血流改善で自然妊娠の可能性も
- 「黄体機能不全」は診断に曖昧さがある
- 自分の体を信じて整えることが第一歩