はじめに〜そのHCG注射、本当に必要ですか?
妊活をしていると、エコーで「卵胞がきれいに育ってきていますね」と言われることがあります。心の中では、「よかった、きちんと育ってる」とほっとする一方で、次の言葉にハッとすることもあるでしょう。
「この後、HCG注射を打ちましょう」
このとき、あなたの中にこういう声があるかもしれません。
- 本当に必要なのかな?
- できれば注射は打ちたくない…
- 自然に任せたいけど、それでいいのだろうか?
医師から「打ちましょう」と言われれば、従うべきだと思ってしまいがちですが、妊活はあなた自身の体・心が主役です。注射を「打つ/打たない」の選択について、あなたが納得して進めることこそ大切です。
この記事では、
- HCG注射とは何か
- なぜ医師は卵胞が育っているときにもHCG注射を使いたがるか
- 注射をしない選択肢、その注意点
- 医師に「打ちたくない」と伝えるにはどうすればいいか
という流れでお伝えします。あなたが安心して、後悔のない選択ができるように――心を込めて解説していきます。
- HCG注射の役割と打つ理由がわかる
- 自然排卵を希望するときの選択肢が学べる
- 医師に注射を断る伝え方と配慮点を知れる
HCG注射とは?排卵を促す注射の基本を知ろう
HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とは
HCGは “Human Chorionic Gonadotropin” の略で、「ヒト絨毛性ゴナドトロピン」と呼ばれるホルモンです。不妊治療や排卵誘発の分野では、LH(黄体形成ホルモン)様作用を持つホルモンとして使われることが多い注射薬です。
つまり、体内で「LHサージ(LHが急に増える)状態」を人工的につくる役割を果たします。
どうして排卵を促すの?
通常、卵胞はFSH(卵胞刺激ホルモン)などの働きで育ち、ある段階でLHが急激に増える(LHサージ)が起こることで排卵が誘発されます。HCG注射は、このLHサージの代わりとなる働きを持つため、成熟した卵胞に対して「今こそ排卵していいよ」と体に信号を送るような役割を果たします。
さらに、HCGには黄体機能をサポートする役割もあります。排卵後、卵胞は「黄体」となって黄体ホルモン(プロゲステロンなど)を分泌し、子宮内膜を妊娠に備えた状態に保ちますが、HCG注射はこの働きを助けることもあります。
HCG注射のタイミングと排卵までの流れ
HCG注射は、卵胞が一定の大きさ・成熟度に達したと判断されたときに使われます。注射後、おおよそ 36時間前後 に排卵が起こることが多いとされ、これをもとにタイミング法や人工授精、体外受精などのタイミングを決めることがあります。
※ただし、注射の種類・量、個人の体質によって、排卵までの時間には多少のズレが出ることもあります。
また、不妊治療の流れとしては、まず卵胞を育てる過程(内服薬・注射薬など)を経て、成熟した卵胞に対してHCG注射をして「排卵を確実に起こす」段階に進む例が多いです。
卵胞が育っているなら、HCG注射は不要なの?
自然排卵との違い
自然排卵とは、体が自らLHサージを出し、成熟した卵胞を排卵する流れです。理想的には、この自然な流れが最も身体への負担は少ない方法です。
しかし、実際には以下のような理由で自然排卵がうまく起こらない、またはタイミングがずれてしまうことがあります。
- LHサージが起こらない、またはタイミングが遅い/早い
- 卵胞が成熟していても排卵に至らないことがある
- 排卵のタイミングが予測しにくく、性交のタイミングを逃す
- 複数の卵胞が育つことでタイミング調整が難しくなる
なぜ医師はHCG注射を使いたがるのか?
- 排卵の確実性を高めたい
自然排卵では、たとえ卵胞が成熟していても、必ず排卵するとは限りません。HCG注射を使えば、排卵を確実に誘導できる可能性が高まります。 - タイミングを明確にしたい
妊活では、性交や人工授精のタイミングがとても重要です。HCG注射を使うことで排卵のタイミングを予測しやすくなり、効率よく妊娠のチャンスをつくります。 - 治療コントロール
治療のスケジュールを整えたいときや、複数の卵胞が育ちすぎたときなど、調整をする目的でHCG注射を検討する医師もいます。
リスクと注意点
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
卵巣が過剰に反応して腫れ、水がたまるなどの症状が出る可能性があります。重症化すると入院が必要なことも。 - 多胎妊娠リスクの上昇
複数の卵胞が成熟・排卵する可能性があるため、双子など複数妊娠の確率が高くなります。多胎は母体・胎児にとってリスクを伴うこともあります。 - 注射・薬剤による副作用
注射部位の痛み、腫れ、頭痛、吐き気、倦怠感など、ホルモン変動による体調変化が生じることがあります。 - 時間・スケジュールの制約
HCG注射を使うと「この時間に打たなくてはいけない」「排卵までの時間を逆算しなければならない」など治療スケジュールに縛られることがあります。
医師に「HCG注射は打ちたくない」と伝えても大丈夫?
患者の意思を尊重する医療とは
妊活に限らず、医療は本来「患者の意思」を尊重するものです。
特に妊活は、あなたの人生、そしてご夫婦の未来に深く関わるデリケートなテーマ。
その中で「自分の体に何をするか」を自分で選ぶことは、決してわがままではありません。
もちろん、医師は妊娠の可能性を少しでも高めるために提案をしてくれています。
だからこそ、その提案を「受け入れる」か「別の選択をする」かを、冷静に考えることが必要なのです。
言いにくい時にどう伝える?おすすめの伝え方
「先生に逆らうようなことは言いにくい…」
そう思って、心にしまい込んでしまう方はとても多いです。
でも、伝え方次第で、医師との関係を悪くせずに自分の希望を表現することは可能です。
以下のような言い方を参考にしてみてください。
- 「できれば自然に排卵したいと思っているのですが、HCG注射は必ず必要でしょうか?」
- 「副作用が気になっていて…HCGを使わずにタイミングをとることはできますか?」
- 「今回は注射を見送る方向で進めることは可能ですか?」
医師もあなたの真剣な気持ちにはきっと耳を傾けてくれるはずです。
「自分の体を大切にしたい」という気持ちに、自信を持ってください。
伝えたことで治療が変わる可能性について
希望を伝えたことで、医師が別の治療法を提示してくれることもあります。
たとえば、
- 自然排卵を確認するために、排卵検査薬やエコーの回数を増やす
- タイミング法の回数や時期を調整する
- 次周期に改めてHCG注射の検討をする
こうした柔軟な対応によって、あなたの気持ちに寄り添った治療が実現する可能性もあります。
一度希望を伝えたことで関係性が悪くなる…ということは、基本的にはありません。
むしろ「主体的に妊活をしている」という姿勢に、医師も安心してくれるはずです。
自然排卵を待つ選択肢とその注意点
基礎体温・排卵検査薬・エコーでの管理
HCG注射を使わずに排卵を管理する場合、自然排卵のタイミングを正確に把握することがとても重要になります。
そのために使われる主な方法は次の3つです。
- 基礎体温:毎朝同じ時間に測定し、体温の変化で排卵を予測する
- 排卵検査薬:尿中のLH濃度を測定して、排卵が近づいているかどうかを判断する
- エコー(経膣超音波検査):卵胞の大きさや排卵の兆候を視覚的に確認する
これらを組み合わせることで、HCG注射を使わずにタイミングをとることも可能です。
自然排卵を待つことのメリットとデメリット
メリット:
- 体への負担が少ない(薬剤による副作用がない)
- 自然な妊娠プロセスに近い形で進められる
- 自分の体のリズムや状態をより深く知ることができる
デメリット:
- 排卵のタイミングが予測しづらいことがある
- 排卵が遅れたり、うまく起こらないリスクもある
- タイミングを逃す可能性が高くなる
自然排卵を望む方は、「妊娠率よりも身体との対話を大切にしたい」という価値観を持っていることが多いです。
あなたの優先したいことが何なのかを明確にしておくと、選択にも自信が持てるでしょう。
タイミングを逃さないためにできること
自然排卵を待つ場合でも、次のような工夫で妊娠のチャンスを逃さないようにしましょう。
- 排卵検査薬は毎日・決まった時間に使う
- 排卵が近い時期は数日間、連続してタイミングをとる
- 排卵日だけにこだわらず、排卵前後にもチャレンジする
- エコー検査の頻度を増やして、確実に排卵を確認する
妊娠は「この一瞬にかける」ものではなく、「日々の積み重ね」が大切です。
排卵日ぴったりでなくても、妊娠につながるケースは多くあります。焦らず、丁寧に、あなたのペースで取り組んでいきましょう。
まとめ〜あなたの身体に正直に向き合おう
HCG注射を打つか打たないかは、医師の提案とあなたの意思、その両方を大切にして決めていくことができます。
不安や迷いの中で、「なんとなく言われるがままに注射した」という経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
でも、今のあなたは違います。知識を持ち、自分で考える力を持っています。
あなたが「自然な排卵で妊娠したい」と思うのなら、その気持ちに正直になって大丈夫です。
医師に伝えることで、新たな選択肢が広がることもあるでしょう。
そして何より、あなたの心と身体が納得できる妊活こそが、未来の赤ちゃんを迎えるために一番大切な準備です。
焦らず、あなたらしい一歩を。
いつか、赤ちゃんと出会えるその日まで、一緒に歩んでいきましょう。
- HCG注射は排卵を促すために使われる
- 自然排卵を望む場合は注射を断る選択も可能
- 医師には丁寧に希望を伝えることが大切
- 基礎体温や排卵検査薬で自然排卵を管理できる
- 自然排卵にもメリットとデメリットがある
- あなたの意思を尊重した妊活を進めよう

